日本のEV車はどこに?

One Young World Japan の理事ダレン・アフシャー氏と電力市場専門家であるダン・シュルマン氏の対談。日本がなぜ世界のEVブームに乗り遅れているかを探ります。

ダレン

では最初に、OYWJコミュニティの皆さんにダン氏を紹介しましょう。簡単な自己紹介と、シュルマンアドバイザリーがどういったことをしているかを教えていただけますか?

ダン

私はアメリカ出身で、過去21年間、海外を行き来しつつ日本に住んでいました。電力業界では15年間働いています。シュルマンアドバイザリーは、日本の市場構造に対する深い理解と、日本と世界との間の文化的、言語的、その他の障壁を橋渡しするための能力を活かしながら、日本のエネルギー市場における外国の企業やその他の利害関係者らの成長を支援しています。

ダレン

次に、ここOYWJでこのディスカッションを行う理由を明確にしましょう。OYWJアンバサダーの多くは、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に非常に熱心です。実際、日本は全体的に見てSDG運動にかなり前向きな反応をしており、一部のアンバサダーはすでにそれらを軸としたビジネスモデルを作りました。

SDGは合計17あり、そのうちのゴールNo.7は、手頃な価格で利用できるクリーンなエネルギーです。ダンさん、それはあなたのビジネスモデルの一環でもありますよね?

ダン

そうです。私の会社が第一に重点をおいているのは、再生可能エネルギーを正しく送配電網に統合するのに必要な技術、そして日本では自由化電力市場になり、市場が健全に成長していくことです。つまり、消費者が自分で電力の供給元を決められるようにして、コストダウンを促すようにするのです。

ダレン

それでは、SDGのゴールNo.7に関して日本がどういった状態にあるのか、そしてそれが今日の市場の中で、私自身が選べるEV(電気自動車)のオプションにどう影響しているかを見てみましょう。最初の質問は、日本のエネルギーは実際、手頃な価格でクリーンなのか。2番目の質問は、私にはどういったEVのオプションがあるのか、です。

ダン

一人当たりの所得が高い諸外国を見ると、日本の消費者電気料金はアメリカの大部分と比べるとかなり高いものの、EUで見られる料金とはほとんど同じです。

日本の原子力発電所の大部分は現在も停止中なので、過去8年間で再生可能エネルギーが健全に成長した中でも、現在、電力のおよそ75%が化石燃料で発電されています。政府が現在立てている2030年の目標でさえ、約55%は引き続き化石燃料に由来するものとなるでしょう。2030年の電源構成の目標は、菅首相が先日発表した、温室効果ガスの排出量を2050年 までに実質ゼロ(カーボンニュートラル)を達成する目標を示したことに続いて、2021年半ばまでに見直される予定です。

ダレン

今ではソーラー発電と風力発電の真っ只中にいると思っていたのに。。。

ダン

実際にそうなんです。しかし、原子力がないとなると、日本は再生可能エネルギー技術とその拡大がさらに進展するまで、化石燃料に頼らざるを得なかったのです。

ダレン

ですから、手頃な価格かもしれませんが、クリーンではありませんね。

蓄電池はエネルギー戦略全般のどこに位置しますか? 近頃、海外では、家や車の蓄電池を、基本的にミクログリッド(小規模発電網)やエネルギーアイランドにするというのが大きな話題のようですね。私が住んでいる日本では、蓄電池が使用されているところを見たことがありません。家庭には滅多にありません。コンドミニアムには絶対ないし、車もほとんどガソリンか従来のハイブリッド自動車で、EV車はごくわずかです。

ダン

蓄電池は、日本における再生可能エネルギーの大幅かつ継続的な成長にほぼ避けられない役割を持っているのですが、それは関係する複雑な要因にかかっています。

過去10年余りにおける屋根式太陽光発電の成長は、政府が公益事業に課したネットメータリングの枠組みによって推進されました。そのシステムでは、屋根にソーラーパネルを設置した場合、旧一般電気事業者が供給した電力の正味使用量のみが月末に請求されます。つまり、電気料金は使用者が発電した電力によって部分的に相殺されるわけです。使用者が発電する1キロワット/時の価格は、そもそもソーラーパネルを購入させようとして政府が設定した高いレートです。こういったタイプのスキームでは、ソーラーパネルが生成する1 kWhの電力は、旧一般電気事業者が販売するkWhよりも高価になります(2016年までは公益事業の料金も政府によって完全に規制されていました)。ですから、電力使用パターンによって異なりはするものの、理論的には、月末に相殺すると使用者にとってプラスになりうるのです。そしてその場合、実際は旧一般電気事業者が使用者に借金していることになります。

家庭のネットメータリング契約は2019年末に終了し始めました。蓄電池を設置するというのは消費者にとって屋根式パネルから最大限の価値を引き出すことができる1つの方法ではあるものの、その案はもっと複雑です。2016年に自由化電力市場になって以来、ほとんどの電気料金は政府ではなく需要と供給によって決まるようになりました。そのため、公益事業の電気料金をどれだけ素早く相殺して、蓄電池に投資したお金を取り戻せるかが予測し難くなっています。経済産業省による規制と市場設計により、今後数年間で蓄電池やその他のハードウェアに対する投資の回収をもっと厚く保証してくれる新しいスキームが促進される可能性は大いにあるものの、それはまだ議論中であり、多くが未定となっています。

ダレン

わかりました。それは政策問題のようですね。しかし、2030年は間近です。そして、これが日本の現状です。台風、地震、複数の自然災害が季節ごとに発生しています。こういったことが起こるたびに、日本はよく停電する傾向がありますよね。カリフォルニアでも山火事のシーズンには停電がよく起こります。私は、独立した電力源をいくつも作っておくことは万人の益となり、これが政府の政策の焦点になるべきだと考えていました。しかしこれは別のディスカッションのためにとっておきましょう。

私が本当に聞きたかったのは、世界で最高の蓄電池テクノロジーのいくつかを持っているにもかかわらず、日本の企業は全体として、この分野で主導権を取るのを拒んだように思われるということです。皆が知っているかどうかはわかりませんが、そもそもテスラの自動車は、もう何年も前からパナソニックのおかげで動いているのです。テスラはパナソニックの蓄電池を搭載しています。何百もの、ですよね? そこで、もう一度尋ねますが、日本製EV車はどこにあるのか、ということです。

今日ネットで調べたところ、現在、日本の自動車メーカーから購入できるプラグイン電気自動車、電気自動車、燃料電池自動車の種類は次のとおりです。車のスタイリングも考慮に入れると、本当に選択肢がなくなります。ダンさんは、日本が諸外国の仲間入りするのを妨げているのは何だと思いますか?

メーカー PHEV EV FCV
Toyota
2
0
1
Lexus
0
0
0
Nissan
0
1
0
Honda
1
1
1
Mitsubishi
1
2
0
Suzuki
0
0
0
Mazda
0
0
0
Daihatsu
0
0
0
ダン

日本の自動車メーカーに代わって言い訳をするつもりはありません。確かに、日本では短距離しか移動しない人がとても多いので、EV技術でグローバル市場をリードしなかったのは不思議です。特に、トヨタがハイブリッド技術を世界に届ける上での専門知識と経験を持っていることを考えると、なおさら不思議です。

ただし、EVにはそれ以外にもいくつかの要素が関係しています。特に二酸化炭素排出削減の観点から見たEVの環境価値は、EVの充電に使用される電力の発電方法と密接に関連しています。ちょっと前に議論したように、福島の原発事故以来、日本の電力生産は化石燃料に大きく偏っています。私のチームが日本における全国的な電源構成(エネルギーミックス)の平均に基づいて、EVと燃料電池自動車について行った最近の調査では、ハイブリッド自動車と完全電気自動車の二酸化炭素排出量の削減量の違いは、期待していたほどの差はないとわかりました。

従来の内部カスタムエンジン車に対して、ハイブリッド自動車の環境面での価値をより高くするメカニズムは、その車自体に物理的に設置されていることに留意してください。それは基本的にいって蓄電池です。それが車の価格を多少高くし、燃費を大幅に向上させるのです。完全なEV車には、充電インフラが全国で継続的に増え続けることが必要であり、これだけの投資は、車両一台が売れるごとにその単価ですぐに埋め合わせられるものではありません。車の充電に使用される電力が、他と比べて汚染を撒き散らすような方法で発電されている限り、一体どうやってEV車に高いお金を費やすよう大勢の消費者を駆り立てるだけのラインナップが揃って、企業や政府が実際に充電インフラの設置率を上げざるを得なくなるまでに至るのかは、見え難いです。

ここで産業戦略も関係してきます。日本の自動車メーカーは、ただ、既存の能力を最大限に活用して、高品質で経済的な価格のハイブリッド自動車を生産したいのです。ハイブリット車は日本でも海外でよく売れていますから。海外で完全なEV車の人気が高まるにつれ、日本の自動車メーカーはEV生産への投資を増やす方向に押され、日本におけるEVの可用性も高まるはずです。日本における現在の発電構成は、日本全体がEVに移行するための環境関連状況の多くを否定しているため、少なくとも今後10年間は、EV移行への推進力の多くは外国からもたらされる必要があると思われます。そしてその10年間に、日本の産業はもっと水素発電技術に投資しようという意図があるようです。これもまた、国内の環境的理由からではなく、輸出の可能性のためです。ここには、いくつかの要素が絡み合っているのです。

日本政府は、菅首相が2050年までにカーボンニュートラルを達成すると宣言したことを受け、2035年までにガソリン車(内燃機関車)を段階的に廃止する意向を表明しましたが、詳細は明らかにされていません。

ダレン

水素は確かに有望なオプションだと思います。しかし、私が本当に興味があるのは10年後ではなく、今なのです。道路にはまだガスを排出する車がたくさん走っています(私のも含めて)。ぜひとも、日本でEVの生産とスタイリングの両方に革命を見たいものです。もしかしたら日産AriyaかBMW i4が日本の自動車メーカーを活性化させるのでしょうか。

ダン

そうかもしれませんね。現在、日産には独自の問題があるので、これは、日産が車両へのバッテリー電源搭載にどれほど積極的かを考えると、本当に残念です。

ダレン

確かに。 ダンさん、今日はお付き合いいただき、ありがとうございます。御社と、御社が提供するサービスをよく知らない読者のために、どこで情報を得られるか、ご紹介願えませんか?

ダン

https://shulman-advisory.com です。こちらこそありがとうございます。私たちはSDGs 7、9、11に情熱を注いでいるので、もう一度対談を実現させて、日本のエネルギーの課題についてもう少し深く掘り下げたらいいですね。

ダレン

全くその通りですね。ダンさん、ありがとうございました。

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